人間大事の企業経営を目指す
「泳げない者は沈めばよい」アメリカの有名なカリスマ経営者の言葉だそうです。成長・拡大路線を突っ走るカリスマ経営者なら、さもありなんと考えさせられる言葉です。この言葉のおおよその意味は「できない者は辞めてくれ」、「ついてこられない者は去れ」ということだと思いますが、自分に厳しいカリスマ経営者は部下にも同じ厳しさを求めがちで、ダメなら辞めてもらうという思考が強いのでしょう。
日本においても厳しい市場環境の中で、成長・拡大を追求しないと生き残れないという強い危機感を背景に、結果が出なかった人は辞めてくれ、スピード化・グローバル化についてこられない人は去ってくれ、考え方が共有できない人はいらない、とはっきり言及する経営者が増えています。そのような会社では、毎年大量に人を採用し、その中でできる人・ついてこられる人が残り、一方で多くの社員が会社を去っていきます。一旦採用するだけ採用しておいて、ダメなら辞めてもらう、まるで使い捨ての駒のように感じられるのは私だけでしょうか。
入社する時点でその社員が採用に値すると評価したのは会社です。その人の人生を左右する判断を会社はしたわけですから、性急にできる・できない、ついてこられる・ついてこられないと追及し、退職に追い込むのは一方的です。縁あって入社してきた人たちを育てていくのも会社の使命です。社員をできない者・ついてこられない者の会社評価に当てはめ、ダメなら辞めていってもらうというのはあまりに会社側の利己的振る舞いに感じます。できない者をできるように育てる、ついてこられない者をついてこられるように育てる、泳げない者を泳げるように育てる、それが本来の会社の姿勢ではないでしょうか。
今の時代、私の考えは甘いのかもしれません。しかし、考えを改めるつもりはありません。縁あって入社してきた社員一人一人と真剣に向き合って取り組んでいく「人間大事の企業経営」を貫きたいと考えています。